オカルトリック (このライトノベルがすごい! 文庫)』:大間九郎/葛西心のかんそーぶん

@ 『オカルトリック』:大間九郎/葛西心(ISBN9784796697279)読了。このライトノベルがすごい!文庫新刊。 「ぼくとねえさんのハッピーハッピー・トラッシュショー」はじまりはじまり…。

  • 元狐憑きの美少年・玉藻は超絶美女にして完全ヒッキーの安楽椅子探偵であるねえさん=葛乃葉の助手として オカルト専門の探偵業を営んでいた。玉藻を溺愛し、身の回りの世話の一切を玉藻に委ね、強請る姉の 面倒を見ながら、彼女の手足、そして目と耳となって活動する玉藻の新たな任務は、とある全寮制の名門女子校で 起こった連続パンツ発火事件の調査。その美貌を生かして女装して女子校へと赴いた玉藻を待ち受けているものとは…。

聞こえてくる評判に興味を惹かれたので購入。やー面白かったです。 もう見事なほどに歪んでどこか壊れた人しか出てこない。 軽妙で小気味よいテンポの会話と退廃と暴力の渦に浸された現実の波状攻撃が独特のドライブ感で迫ってきます。

主人公である「玉藻」くんは元「狐憑き」の少年で、狐が払われた以後である1年間の記憶しか持たないという設定です。 どうしようもなく玉藻に依存仕切っている姉の面倒を見つつ、飄々とつかみ所の無い様子で日常をおくっている風です。 とはいえ彼も相当イイ性格をしており、人形的でありつつもどこまでも人間臭い…見事な事なかれ主義っぷりが あちらこちらで炸裂しているのが小憎たらしいですね。 玉藻の姉である「葛乃葉」さんは超絶美人さんですが もう見事なまでの玉藻くん依存症で、我が儘放題のダメっ娘さん。料理洗濯は元より、 お風呂にも一緒に入って身体を洗いっこしたりとやりたい放題ですね。 直ぐ拗ねるし、だいぶ頭の螺子飛んでるしと相当に扱いにくい感じの人です。 でもいざ安楽椅子探偵としての力を発揮する場面になると、そこまでのダメっぷりを 帳消しにして余りあるほどの見事な推理を披露してくれます。 そんな彼らが立ち向かうのは様々なオカルト事件。超常現象にUMAにと 日常を蝕む輩にほどよく立ち向かうわけです。

…という構造で始まる物語ですが、 第二章で語られる1年前の事実を踏まえると見えてくる絵が相当に違ってきます。 玉藻と葛乃葉のふたりのあいだに存在する過去があった上での共依存関係。 ただただ罪の意識と空っぽの記憶に縛られて厭世的な雰囲気を纏う玉藻くんと ただただ玉藻くんの幸せを願ってはその思考を巡らせる葛乃葉ねえさんの コンビは大変良いものだったかと。 全てを踏まえた上で語れれる玉藻くんの心情もまた重く切ないものでありました。 ひとりひとりでは怯え惑うしかない辛い現実の中でも ふたり寄り添えばなんとか生きていける…そんな地べたの希望を旨に日常を過ごす 姉妹の姿は大変見目麗しかったかなと。

……でもまあ、最後の最後で全部イソラたんが持って行ったけれどね!! 文章も大概だったけれど、イラストがもう怖い、たまらなく怖い。 ちょっと愉快なヒロイン枠だと思ったのに…思ったのに…(泣 ああもうイソラたん可愛いよイソラたん。

ということで続きも楽しみな作品です。今度はどんなぶっ壊れた連中が出てくることになるのやら。

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■関連情報
タイトル『オカルトリック (このライトノベルがすごい! 文庫)』
作者大間九郎/葛西心
出版社宝島社
発売日2012-05-11
区分一般
カテゴリライトノベル
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ページ執筆者:東雲あずみ

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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)
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ここは東雲さんの崩壊日記改から「かんそーぶん」を切り出したページです。。 18歳以上対象の作品を取り合うことが 多々ありますので、その旨ご理解の上お読みください。
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