『神童機操DT-O phase01 (講談社ラノベ文庫)』:幾谷正/御山ロビのかんそーぶん
@ 『神童機操DT-O phase01』:幾谷正/御山ロビ(ISBN9784063752144)読了。講談社ラノベ文庫新刊。 第一回講談社ラノベ文庫新人賞優秀賞受賞作品である「純潔戦記ドウテイオー VS SE-X」の改題作品。
汀宗高校に通う2年の男子生徒・天童 貞臣。女性経験が無いことを示す、耳元の「タグ」を未だにぶら下げた
同学年でも数少ない童貞であった。女子に告白されては断り、悪友とつるんでバカ話をする…そんな天童の日常は
ある日突然崩れ去る。昨今世界を騒がす「謎のテロ組織」が天童たちの住む汀宗市を襲撃してきたのだ。
一度はシェルターへ避難した天童だったが、
天童と因縁浅からぬクラスメートの少女・愛沢恵后の姿がシェルター内に無いと知り、
彼女を捜すために危険な外へと飛び出してゆく。
そんな天童の前に突然墜落してきた謎の「巨大ロボット」。
そのハッチから現れたパイロットらしき中年男の叫びが、天童の運命を大きく変えることとなるのだった。
「お前らの中に、童貞は居るかァーーー!?」
新人賞講評で、 そのインパクトのあるタイトルと、平坂読氏の評が脳裏にこびりついていた作品。なもんで店頭で見かけて即ゲット。 タイトルは変わってましたが、DT-Oでロボですからね、もう一発特定といいますか(苦笑 そのふざけたタイトルから、おちゃらけた内容を想像すると思いますが、ふたを開けてみればどうしてどうして イマドキみんな恥ずかしがってやらないような、 真っ向からの熱血スーパーロボットものでありました。
正直、基本的な設定だけみてしまうとベタの極地とも言える本作品ですが、 おちゃらけに走ることなく、真っ向から世界と物語にぶつかっていく様子がたいへん好印象です。 方向性的には、最近だと「ラインバレル」あたりが近しい感じですが、あのへんと決定的に違うのは 主人公である天童が極めてハッキリとした主軸を持つ少年であること。 その身に起きた偶然の中から、自ら選び、引き寄せ、自らの運命とする様子は読んでいてひじょうに心地よいものでした。 当然、天童も未完成な少年であるが故に、過去のトラウマなどから迷い惑うこともありますが、 それでも最後は自らの意志でその行く末を選び取ってくれるわけです。 こういう主人公像ってのは近年あまりお目に掛からない代物でしたしねぇ。
あとは謎の置き方かな。敵方の目的や、味方たちの戦う理由などに謎をちりばめるのがここ10年の定番ですが 本作では何のために何と戦うのかという部分は極めて明確に示されており、 結局それぞれが何を考えて何をやってるのかわからないというような状態になりません。 このあたりも地味に重要ポイントではないかと。
あと本作のもう一本の柱となるのは 天童を導くこととなるDT-Oのパイロットであるオッサン…神楽とやり取りですかね。 亡き父の言葉を愚直なまでに守ろうとするも、上手く行かずにいる天童の前に現れた謎のおっさんこと神楽一尉。 彼もまた、自らが背負った罪を贖うためにただがむしゃらに生きている不器用な男です。 そんな神楽に、父親の姿を重ね、また年の離れた友人として従う天童の姿もまた良いものでした。 現場のたたき上げ的なおっさんと少年の友情にも似た関係、これも萌えと言えましょう。 おっさんが格好良いのは大切だよね。
ただまあ、確かに今これが売れる状況というのはちょっと想像出来ないというのは確かなところでして… ただでさえ人気が出ないと言われるスーパーロボットもの、そして 異様なまでの男比率、それも昔気質風の気の良いおっさん軍人萌え推し、さらに頻出する「童貞」の二文字と 何重苦だよ!!と思わずツッコミをいれたくてしょうがなくなることしきりです。 ヒロインも本格的に絡むのは次巻以降だろうしなぁ…。
phase01とあるように、今巻はあくまでもプロローグ。お話はまだここからという状況で、 どこを到達点とするのかも不明瞭なため、なかなかオススメはし辛いところですが、 スパロボ好きな方、特に熱血系ながらもリアル寄りの方、は手にとってみて損は無いかなと。 というか寧ろ読んでください、応援も兼ねて。
■関連情報 | |
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タイトル | 『神童機操DT-O phase01 (講談社ラノベ文庫)』 |
作者 | 幾谷正/御山ロビ |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2011-12-28 |
区分 | 一般 |
カテゴリ | ライトノベル |
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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)