明日から俺らがやってきた (電撃文庫)』:高樹凛/ぎんのかんそーぶん

@ 『明日から俺らがやってきた』:高樹凜/ぎん(ISBN9784048862721)。読了。電撃文庫新刊。 第18回電撃小説大賞 電撃MAGAZINE賞受賞作品。進路に悩む貴方へ、そして現実に疲れた大人たちへ贈る SF(すこし不思議)真っ向青春ラブコメディの1巻目。

「…高瀬チョップ」

推薦にして出来た時間で大学デビューを狙うか、将来の就職を見越して上のレベルの大学を受験するか、 進路調査票という明確な人生の岐路を前に悩みに悩む高校生・桜井真人。 そんな彼の前に突然現れたのは受験と推薦、ふたつの未来の6年後からやってきた桜井真人たちだった。 大学デビューを果たし、すっかりチャラくなった推薦の桜井真人、通称「推薦」。 1浪するも、上のレベルの大学に進学した受験の桜井真人、通称「受験」。 だが、ふたりが語る未来はどちらも平穏とは言えない暗いもので、どちらも自分以外の選択をするようにと 真人に迫る。ほとほと困り果てた真人は、進路調査票を提出出来ないまま、担任から逃げ回る日々を送るハメに。 そんな中、真人はこれまで接点の無かったクラスメートの少女、 そのクールな言動と美し過ぎて近寄り難い容姿から「氷の女王」と呼ばれる孤高の存在、 高瀬涼と知り合う。交流を深めるうち、二つ名とは相反する涼の本当の姿を知った真人は 彼女のために何かしたいと考え、「受験」とも「推薦」とも違う第三の未来を目指すことを決断するが…。

店頭でタイトルとオビのアオリが目を惹いたので購入。 未来からやってきた自分たちというSF的な要素は備えつつも、 本筋はいまどき恥ずかしくなるくらいに真っ向勝負の青春ラブストーリーでした。 示された暗い未来に惑いつつも、好いた女の子を幸せにするために、 ただがむしゃらに行動する主人公・真人くんが ただもうひたすらに眩しくて、全力で青春してる感じが羨ましくてしょうがなかったです。

パラレルの未来からやってきたふたりの真人、「受験」と「推薦」たちの様子も まあ、たかだか6年であまりにも変化し過ぎという面はありつつも、境遇の生っぽさが 年齢的には彼らに近い私の視点からは泣けるもので…。方や非モテ人生で仕事も上手く行かず、 方や女性にはモテたものの派遣切り喰らうわ人間関係薄いわと…(泣 本作での賑やかし役ではありますが、彼らは彼らとしての人生を生き、後悔を覚えつつも 最終的には自分たちの未来をつかみ取ろうとするあたりが好感度が高いところでした。

ヒロインの涼さんはスレンダー高身長なモデル体型にクールな容姿の黒髪美人さん。 その容姿と口調などから、周辺からやや浮いた孤高の存在として認識されていますが、 実際には世話好きで気遣いのあるとても優しい口べたの女の子で大変可愛らしいです。 いろいろと生き方が不器用なために誤解されて孤立してしまっている彼女ですが、 真人くんが彼女のためにと頑張ろうとするだけの説得力は十二分に備えてますな。 自分の気持ちになかなか気づかない真人の様子に対して時折見せる嫉妬や不満の高瀬チョップが たいへん可愛くて良かったなぁと。全体的にスレンダー過ぎる自分の体型にコンプレックス持ってるのもラブリーでした。

若い読者さんには暗い時代でこその未来への希望を。 年かさの読者さんには過去の想いを思い出させてくれるような、そんな読み終わって前向きな気持ちになれる作品でした。 内容は素朴で派手さは正直ありませんが、素朴だからこそ光る想い、伝わる気持ちがあるんじゃないかなと思います。 個人的には良い一冊を読んだなと。

大賞応募作ということもあり、物語としてはかっちり〆られているので続刊は無いのだろうと思ってたのですが ネット公開されているインタビュー記事を読むと続編も予定されているとのこと。 どんな感じになっていくのかは未知数ですが、楽しみに待ちたいと思います。

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■関連情報
タイトル『明日から俺らがやってきた (電撃文庫)』
作者高樹凛/ぎん
出版社アスキーメディアワークス
発売日2012-02-10
区分一般
カテゴリライトノベル
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ページ執筆者:東雲あずみ

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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)
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ここは東雲さんの崩壊日記改から「かんそーぶん」を切り出したページです。。 18歳以上対象の作品を取り合うことが 多々ありますので、その旨ご理解の上お読みください。
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