あなたの街の都市伝鬼! (電撃文庫)』:聴猫芝居/うらびのかんそーぶん

@ 『あなたの街の都市伝鬼!』:聴猫芝居/うらび(ISBN9784048862752)読了。電撃文庫新刊。 第18回電撃小説大賞金賞受賞作品…ということとは関係なく表題が目を惹いたので購入してみました。 人々のあいだで囁かれる数多の「都市伝説」… それらが可愛い女の子の姿で目の前に現れたら、あなたならどうしますか?

民俗学…特に妖怪や都市伝説などの怪奇譚に傾倒し、 高校生ながらに大学の研究室に通い詰める日々を送る少年、八坂出雲。 そんな彼が、徹夜続きで都市伝説についてのレポートをまとめながら迎えた16歳の誕生日、 有名な都市伝説「ムラサキカガミ」について記していると、本当にその怪奇現象が発生してしまう。 紫に塗りつぶされた鏡の中から現れたおどろおどろしい姿をした少女の様子に、 命の覚悟すらした出雲だったが、あるひとつの間違いに気づきそれを指摘する。 それで素に戻った「ムラサキカガミ」の少女は一言詫びると鏡の中へと消えてゆき、出雲は窮地を脱したのであった。

翌日、出雲は、出雲が通う研究室の主であり、 民俗学の権威である犬飼教授の勧めで都市伝説についての本を編纂することとなる。 憧れの教授から任された民俗学者への第一歩、そんな意味合いで理解し、希望に燃える出雲だったが 帰宅した彼の前に再び現れた「ムラサキカガミ」の少女「サキ」によって そのことが彼女ら都市伝説から生まれた鬼…「都市伝鬼」たちにとって重大な意味を持つことを知るのだった。 こうして出雲は「伝鬼」たちのため、彼女らの伝承を編纂することになる。 だが、そんな彼の元に続々と「伝鬼」たちが押し寄せてはじめてしまい…。 化け物美少女たちに囲まれた出雲の運命や如何に?

店頭のフィーリングだけで買ったのでどんなものかと思ってましたが、 面白くてするすると最後まで読み終わりました。 さすが金賞は伊達じゃないってことですわな:D

前述したように本作は「都市伝説」を題材にしたラブコメディ作品。 バトル要素もありますが、メインはやっぱりラブコメですね。 「妖怪」が美少女姿で押し寄せてくるハーレムものというのはよくある題材ですが 本作の場合は「都市伝説」が美少女の姿で押し寄せてくるというのが新機軸と言える…かな? 妖怪と都市伝説の境界って多少曖昧な部分がありますから、同じじゃないかというご意見もあるかと思いますが、 そのあたりもしっかり物語に織り込まれていたりと、なかなか着眼点が面白い作品になっています。 主軸をしっかりと説明できているので、物語全体に安定感が生まれて 結果読みやすさにも繋がっているのかなと。 主人公である出雲くんの意志がしっかりと前に出てきているのも個人的評価ポイントでした。

都市伝説は極めてパターンが多いのが特徴とも言えますが、 であるからこそ伝鬼たちは確固たる安定したアイデンティティを確立しきれない。 自分たちという存在を確定させ、また広めるために自分たちの本の編纂者を求めているというのは ああ、なるほどなぁと膝を打つ解釈かなと。 日本で妖怪といえば水木しげる先生が描かれたものがデファクトスタンダード となっている場合が多いというのは多くの方に納得いただけると思いますが これと同じようなことを、伝鬼たちは出雲くんに求めているわけですね。 となれば、当然自分のことを良く書いて貰おうとアピールしにくるわけですよ。都市伝説の怪奇現象が(笑 こうして出雲くんの日常は美少女都市伝鬼たちに文字通り翻弄されまくることになるわけです。 なんぼ美少女揃いとはいえ、さすがに同情したくもなる境遇ではありますが 出雲くんは出雲くんで、怖いのは苦手なものの、そんな恐怖心を乗り越える研究者魂を 随所で見せてくれるのでなかなか好感度の高い主人公さんと言えます。 時々限界突破して振り切れるのはご愛敬ですがね。

ヒロイン陣。「ムラサキカガミ」、「コトリバコ」、「ベッドの下の斧女」、「メリーさん」などなど メジャーどころから、多少マニアックなところまで取り揃えてのヒロインさん大盤振る舞いが いっそ清々しいですが、メインヒロインは「ムラサキカガミ」の都市伝鬼であるサキさんとなります。 肩までのふんわりショートヘアにワンピース姿と現代的な女の子然とした格好ながら、口調は時代がかった言い回しで 家事能力万能、面倒見も良く心優しいというどこがムラサキカガミなんだと思わず突っ込みたくなるほど良い子さんです。 いやもうこれがまた可愛くてですねぇ…。甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるわ、やたらに無防備でノーガード気味なところも凶悪。 都市伝鬼の中では古参の部類のためか情動部分は口調宜しく落ち着き払ったもので、やや達観した感もありますが 普段がそんなであるからこそ、終盤で見せてくれる出雲くんへの執着心の吐露がまた破壊力高くてニヤニヤできますな。

黒髪和装少女な「コトリバコ」の「コトリ」ちゃんや、ノリの良い器量よしのお姉さんな「ベッドの下の斧女」のべど子さん、 そして出雲くんの同級生の子たちなど脇を固めるヒロイン陣もそれぞれ個性は十分に付けられていて 華やかで楽しい空気を演出してくれています。まあ、やっぱり物騒な子ばかりなんですが。

お話としては一応まとまっているものの、続けることもまったく問題無い作りに見えるので 続編が出るのかは正直未知数なところですが、もっと出雲くんとサキさんがいちゃついてるところを見たいので もう何冊かは続いてくれると嬉しいかなぁと。バトル要素はアクセント程度にして欲しいところですが。 とりあえず都市伝説ネタが好きで、可愛い女の子が好きな方は手にとって損は無いかと思います。 ハァハァ、サキさんに添い寝してもらいたいハァハァ………抱き枕か添い寝シーツ発売フラグかこれ?

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■関連情報
タイトル『あなたの街の都市伝鬼! (電撃文庫)』
作者聴猫芝居/うらび
出版社アスキーメディアワークス
発売日2012-02-10
区分一般
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ページ執筆者:東雲あずみ

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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)
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ここは東雲さんの崩壊日記改から「かんそーぶん」を切り出したページです。。 18歳以上対象の作品を取り合うことが 多々ありますので、その旨ご理解の上お読みください。
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