『少女不十分 (講談社ノベルス)』:西尾維新のかんそーぶん
@ 『少女不十分』:西尾維新(ISBN9784061828001)読了。講談社ノベルス新刊。 とある小説家が語る10年前に起きた出来事。
小説家として仕事を始めて10年。だが僕はついぞ小説というものを書いた記憶が無い。 今回は長年担当者をつとめていくれていた女史の結婚退職祝いとして 本人がそれを喜ぶかはわからないが、ともかくそういう口実で 10年前に僕が体験したトラウマについて記そうと思う。 それがきっと僕を拙速を重んじ、多作を旨とする小説家たらしめているから…。 それはまだ大学生だった「僕」が自転車に乗って大学に向かうところから始まる。
ひとことで言えば私小説風な作りの一冊。 語り部となる小説家の先生は…西尾維新先生であると考えることも出来るし ただの登場人物であると考えることも出来ます。このあたりは受け手がどう思うかですよね。 起きる事件自体はある意味で他愛もないものであり、 展開についても大筋についてはほぼ類推出来、かつそれで間違いもないでしょう。 話はあちこちに脱線し、本筋には不要と思える余分な要素や言い回しが頻出します。 このあたりは西尾維新作品を読み慣れていればまあいつものことかと思えるでしょうが そうでないならばややハードルが高いかもしれません。
さて、では面白く無かったかと問われればはっきりと面白かったと答えます。 「僕」と「U」のそれぞれにずれたやり取り…やり取りと言っていいのかはわかりませんが 状況がハッキリとしていくにつれてなんとも言えない味わいを醸してくれていました。 特に終盤の流れの美しさは、 「クビキリサイクル」以後西尾維新作品を相当数読んでる 身としては震えざるを得ませんでした。 この小説を書くのに10年掛かったとありますが、最後まで読めばなんとなく納得出来るのでは ないかなと思います。
まあ、なんというか極めて感想が書きづらい作品なのでどうまとめたものかと 窮してる部分はあるのですが…西尾維新という作家を知る上では確実に外せない一冊なのは 間違いありません。西尾維新にとっての作品とは何なのかが わりとストレートに記されている…と思うことも出来ますしね。
ああ、しかしうん。ここまで読後感がいいとは正直思わなかったなぁ(^^;;;;;
■関連情報 | |
タイトル | 『少女不十分 (講談社ノベルス)』 |
作者 | 西尾維新 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2011-09-07 |
区分 | 一般 |
カテゴリ | 小説 |
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森岡浩之
Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)