リラム 〜密偵の無輪者〜 (Novel 0)』:神野オキナ/西E田のかんそーぶん

@ 『リラム-密偵の無輪者-』:神野オキナ/西E田(ISBN9784042560234)読了。 ノベルゼロ新刊。神に代わり経済が支配する世界で渦巻く謀略に立ち向かう 美しき元サムライの青年と、彼の背を護る戦古貴人族の元王女、 そして頼もしき仲間たちの始まりの物語。

  • 神が立ち去り、神により定められた概念が意味を失い、 「経済」によって全てが決定されるようになって千年が経過した世界。 そこでは「国」は「圏」へ、「王」は「位主」へ、「宗教」は「調律衆」へ、 それぞれに呼び名と姿を変えていた……。 若くして常勝の将としての才覚を持ちながらも、 それが故に実の兄に疎まれ、生まれ故郷である圏を追われた東圏の元第三志士レイロウは、 世界の東西を繋ぐ貿易の要所である圏ロキオルスの第二女志士マリエイラに その類い希なる「房中術」の腕を買われ、彼女の食客としてロキオルスの圏都リーシュにほど近い屋敷で 侍女である戦古貴人族(ウォーエルフ)のリンザと共に暮らしていた。 そんな彼に、久しく無かった「兄」の刺客が襲いかかる。 それはロキオルスにその手を伸ばす暗雲の前触れでもあった。 マリエイラの言外の願いにより、レイロウは表沙汰に出来ぬ方法で、 ロキオルスの危機を回避するため、独自に動き始める。 自らが圏に所属することを示す指輪を捨て、 「無輪者」となった男と、その仲間たちの、兵なき戦争がここに始まる。

作者さんノベルゼロレーベル初登場となる新刊は独特の世界感を持ったファンタジー諜報戦モノ。 いわゆるファンタジー世界ですので、人間以外にもエルフやドワーフなどの種族が登場しますが、 いわゆる「魔法」がないという世界です。世の中のあらゆるものが数値化され、 それらの数値を踏まえて計算された結果の損得が世界の意志決定の大きな要素となっているというのが 面白いところですね。ですが、そのぶん絡繰り仕掛けや機械的なものは発展しているので、 スパイものでお馴染みの秘密道具系のガジェットはしっかりと登場します。

従来のラノベの想定読者層よりも高めの年代をターゲットとするレーベルからの発売ということもあり、 人死にもありますし、アダルト要素もあります。 まあ、エロ小説ではありませんので、程よい程度ですけれども。 主人公であるレイロウが「房中術」の達人であり、それをめいっぱい活用してくれるので シリアスめな物語のあちこちで、艶やかに濡れた華を咲かせてくれます。

主人公の「レイロウ」は、作者さんお得意の女性と見紛うばかりの美男子の系譜です。 気ままな隠遁生活を趣味の料理と、 マリエイラさんと侍女のリンザさんらとの爛れた性生活…もとい治療…で過ごす元志士(王子)さまです。 頭は切れるし、個人の戦闘力も相当のもの、そしてまだまだ謎を持っていそうと 美味しいところを詰め込んだ感じですねぇ。

そんなレイロウと暮らす侍女の「リンザ」さんは長身のウォーエルフ族の女性。 巨大な両手長剣を自在に操る戦士であり、元々は北方の小国の女位主(女王)であったという曰く付きの美人お姉さんです。 レイロウに対して絶対的な忠誠を誓い、普段は侍女として従いながらも、 事が起きれば有能な右腕、荒事では背中を預けられるパートナーでもあるというこちらも なかなかに美味しい役どころですね。頼れるクールなお姉さん系なのに レイロウにメロメロなのもポイント高いところです。お仕置きとかご褒美にキュンキュンしてる様子が可愛いですなぁ。

もう一人のヒロインである女志士(姫)「マリエイラ」さん。 生まれついての病弱で貧弱な身体を、レイロウの房中術により治し、 姫として圏難に果敢に当たろうとする、護りたい系でありながらもハッキリとした力強い意志を持つ… そんな女性です。当然、レイロウとは幾度となく肌を重ねた間柄で、彼に惹かれているのは 間違いないのでしょうが、そんな女性的な一面と、姫として大局を見据えて冷徹に動く、そんな一面の ギャップがとても印象的でした。そういう女性を責めたてて甘い声をあげさせるってのも背徳感あっていいですよね

それ以外にもレイロウの元で動く印象的な仲間達は多数登場します。 個人的に特に好きなのはブルム爺さんですかね。やっぱりこうスパイモノにはトンデモ秘密道具が欠かせませんから。 無理難題に悲鳴をあげつつも、面白い企画ならきっちり仕上げてくるあたりが好感度高いです。 あとは、タグロ夫婦も微笑ましくも頼りがいがあって好きです。

物語も捻りが利いていてなかなかに良かったかと。冷酷で無慈悲な相手と戦いながらも、 人としての情と理性を忘れないレイロウらの様子は安心して読めるものでした。 レイロウさんは超人的な人物ですが、ひとりで全てを処理出来るわけではなく、 頼もしい仲間達の力を借りつつの戦いなのだというのも印象的でした。

以上、作者さんのお得意の要素はふんだんに入れ込みつつ、意欲的な設定と 魅力のあるキャラクターを配置したポイントの高い新館でした。 物語としては始まりの物語という形で完結していますが、 いろいろと続編への伏線は残しつつの終わりですので、続編を楽しみにしたいところです。 売れ行き次第でしょうから、手に取ってくれる人がひとりでも増えることを祈りつつ…。

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■関連情報
タイトル『リラム 〜密偵の無輪者〜 (Novel 0)』
作者神野オキナ/西E田
出版社KADOKAWA
発売日2016-07-15
区分一般
カテゴリライトノベル
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ページ執筆者:東雲あずみ

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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)
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ここは東雲さんの崩壊日記改から「かんそーぶん」を切り出したページです。。 18歳以上対象の作品を取り合うことが 多々ありますので、その旨ご理解の上お読みください。
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