彼女たちのメシがマズい100の理由 (角川スニーカー文庫)』:高野小鹿/たいしょう田中のかんそーぶん

@ 『彼女たちのメシがマズい100の理由』:高野小鹿/たいしょう田中(ISBN9784041004975)。 角川スニーカー文庫新刊。第17回スニーカー大賞優秀賞受賞作品。 メシマズヒロイン達に振り回される少年の受難の日々。

  • 両親の都合で一人暮らしを始めた愛内葉介。 そんな彼を悩ますのは幼馴染みの パーフェクト美少女・香神紅緒についてのとある問題だった。 そう、彼女の手料理が切実に不味いことが判明したのだ。 葉介の母の頼みで、愛内家の家事全般を取り仕切ることになった 紅緒ははりきって日々の食事も用意してくれるのだが、 そのどれもが独自のアレンジの行き届いた代物揃い。 そんな中も、せっかく作ってくれたモノを無碍にするわけにもいかず 胃袋に納め続ける日々に葉介は疲弊してゆく。 そして休む暇も与えずにあらわれる新たなメシマズヒロイン達の猛攻に はたして葉介の胃袋は耐えきれるのか。

「だから、さ。そろそろ、おいしいって言ってもいいんだよ」

タイトルで興味を持って、カラー口絵でトドメを刺されて購入してみました。 世に数多存在するヒロイン陣の結構な数が所有する毒料理スキルは先鋭化と記号化の 結果として、紫色だったり、ふつふつと泡だったり、嫌な煙を吐いたりと、もはや食べ 物ではない次元へと昇華されていますが、本作はその部分を再解体し、 「現実に再現可能なレベルでリアリティのある毒料理」へと回帰させるという、 誰得だよという展開に挑戦した意欲作となっています。

登場するヒロインは3人。 ほぼ万能ぽややん幼馴染みの紅緒さん。 従妹の金髪英国美少女リリィ・アップルガースさん そしてクラスメートのクール系美少女花菱カロンさんとなります。 そしてそのそれぞれが、独自のメシマズスキルを保有するという嬉しいんだか嬉しくな いんだかという状況。 アレンジャー、味覚音痴、英国etc.など文字通りメシマズの理由が付与されており 実際に作れそうなだけにリアルな嫌さがあります。

ヒロイン陣のなかではリリィさんがやっぱり癒やし度は高いですね。 生活力皆無っぽいのがいかんともし難いですが。

紅緒さんは見事なパーフェクト幼なじみ(料理除く)で、 甲斐甲斐しいお世話の様子はただただ羨ましいばかり。 でも料理だけは…。 彼女の保有スキルを鑑みると、 メシマズ改善の余地がないのが悲惨です。 周りの反応から自分の料理がダメなことは理解していても、 極度の味音痴のため自分自身では分からないという状況ですからね。 葉介に美味しいと言って欲しくて頑張ってるけど、 それが全部逆効果というのはかなり可哀想であります。 それでもメゲない強さが魅力ではありますけどね。 地獄への道は善意で舗装されてるものなのが悲しいことですが。

カロンさんはツン成分というか、それ辛み成分だよね的な(巧いこと言った感) そんなヒロインさん。デレ分は少なめですが、地味にサービスシーン担当だったりと 存在感はあります。てっきり長門かと思ったらそっちなんだ…。

主人公の葉介くん。ややひねくれた子ですが、矜持はもってるのでそれはそれかな。 どんなアレな料理でも作ってくれた以上は食べると、そのあたりはいいですね。 彼が一人暮らしを始めた直後のお金の減り方エピソードが 生々し過ぎて泣いた。すごい身につまされましたよ。

文章面、よくラノベを研究してるんだなーという感じがしますね。 ただラノベらしくしようと言い回しを重ねる部分がぎこちないとか パロディ系がやや上滑り感があるのが今後の課題かと。 あとは全体的にお約束に対する逆張りに腐心していて、 そこが面白みのある部分ではあるものの、 やや、やり過ぎの感も。 このあたりはうまいことバランスをとって貰いたいところです。

途中からあれっと思ったのですが、次巻へと続いています。 日常系のエピソードなので明確な区切りがそもそも付かない作品ではありますが 一度終わらせてしまっても良かったように思います。 まあ、詮無いことですね。 はたしてメシマズ改善が先か、葉介くんの舌が調教されるのが先か… やっぱり調教されるしか手がない気がします。

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■関連情報
タイトル『彼女たちのメシがマズい100の理由 (角川スニーカー文庫)』
作者高野小鹿/たいしょう田中
出版社角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日2012-08-31
区分一般
カテゴリライトノベル
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ページ執筆者:東雲あずみ

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