十八時の音楽浴―漆黒のアネット (ガガガ文庫)』:ゆずはらとしゆき/海野十三のかんそーぶん

@ 『十八時の音楽浴-漆黒のアネット-』:ゆずはらとしゆき/宮の坂まり(ISBN9784094510133)。ガガガ文庫新刊。「跳訳」シリーズの第一弾。 昭和初期に活躍した、日本のSFの始祖とされる小説家 海野十三氏の 短編「十八時の音楽浴」と「火葬国風景」をベースに現代のライトノベルとして 「跳訳」したとのこと。

昭和三十三年。今日も話の種を探して街を彷徨う小説家・甲野八十助。 そんな彼の前に現れたのはかつて今は亡き妻を巡り争った恋敵・鼠谷仙四郎だった。 死んだと知らされていた旧友との再会は八十助になにをもたらすのか…「火葬国風景」。 遥かな未来。地底深くに建国されたミルキ国は、 独裁者ミルキII世の下、徹底した偏差値管理、不老装置による老化からの脱却や 「音楽浴」と呼ばれる思考強制装置により完全に統治されていた。 「音楽浴」を始めとする様々な発明品を作り上げた天才美少女科学者・コハク博士は 今日もいぢりがいのある大統領をいぢって遊ぶ日常を繰り広げていたが…「十八時の音楽浴」。 そして二つの物語を繋ぐ書き下ろしのエピローグ。長き旅の終着点そして…「漆黒のアネット」。

いやはや、思った以上に面白かったです。 同時になんとも懐かしい気分になる一冊でした。 原作の流れを大部分生かしたまま、作者独自の解釈と肉付けで、 本来別作品である2つを見事に融合させた点がともかく素晴らしい。 一見まるで関係の無い物語がジワジワと一体化していくのがかなり楽しいです。 「十八時〜」の後半と「漆黒〜」は一気に読みきってしまいました。 幻想怪奇とディストピアの物語が、大きなラブストーリーとして結実しています。 従来のゆずはら作品とリンクするネタもちょこちょこと仕込まれていてニヤリとしたりとか。 ところどころに挟まれるえっちな描写は色々と倒錯はしつつも、直接性は薄いのですが 想像喚起力が強力でなんともえっちぃです。 コハク博士の破壊力は挿絵パワーも相まってなかなかのものなのですが、 それをも上回る破壊力を秘めたポールたんにハァハァ<……。

懐かしさの部分については私のかつての読書体験と原作の時代性との交差が原因かな。 原作の流れがどれほど生かされているかの証左かと。

なお元となった2作品は既に著作権が切れており、「青空文庫」で読むことが出来ます。 本巻を読み終わったあとで、こちらも読んでみると面白いと思います:D しかしまぁ、作品タイトル一覧の段階でなんとも心躍るのが並んでますねぇ。



■関連情報
タイトル『十八時の音楽浴―漆黒のアネット (ガガガ文庫)』
作者ゆずはらとしゆき/海野十三
出版社小学館
発売日2007-06-19
区分一般
カテゴリライトノベル
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ページ執筆者:東雲あずみ

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Shinonome Azumi(yuunagi@maid.ne.jp)
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ここは東雲さんの崩壊日記改から「かんそーぶん」を切り出したページです。。 18歳以上対象の作品を取り合うことが 多々ありますので、その旨ご理解の上お読みください。
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