「お付き合いしている男性がいるの」…大親友である律から、 青天の霹靂のような告白を受けて混乱する佳月。 そんな心を落ち着かせようと、佳月はひとり公園に立ち寄るが 運悪く酔っ払いに絡まれてしまう。 そんな佳月を救ったのは、公園までの道中で出会い頭にぶつかった青年だった。 佳月は青年に心惹かれつつも、互いに名乗らぬまま別れる。 しかしその数日後、佳月は思わぬところで青年の姿を目撃することになる。 そう、街中で律と親しげにしている彼の青年の姿を…。
1年ぶりとなるシリーズ新刊は前巻である「私の巣-マイ・ネスト-」と同様に 山百合会とその周辺以外の、リリアン女学園での出来事にスポットを当てた形の読み切り長編です。 今回特に山百合会どころか、薔薇様の「ば」の字すら登場しません。 ですが、本作じつはちょっとした仕掛けが施されており、 それに気づくとこれまたもう読んでてニヤつくこと必至の素敵な内容でした。 まあ、そのへんはプラスアルファであって、本筋自体が楽しいのですが。
律さんと佳月さんの関係は百合…では無く、 深く深く結びついたまさしく親友という言葉が相応しいもの。 本当にお互いを大切にしていて、かつ気配りもしっかりとしている 普通だったらここ大拗れするよなぁという局面もかっちりつぶし合ってるのが、ある意味新鮮でした。 そんな中で、女同士の友情と男性との恋愛で右往左往するふたりの様子は たいへんに微笑ましくて、読んでいて「ああ、少女小説だなぁ」と妙な感慨に耽ったりも。
「私の巣」でもそうでしたが、山百合会に縛られる必要が無くなったことで 「マリア様がみてる」という世界が良い意味で広がりを持てたのだと思います。 祐巳さんたちが登場しないのは寂しいというのは確かにありますが、 それ以上の楽しみを提供してくれていると思いますので、 マリみて好きなら読んでおいて損はありません。オススメです。 しかしまぁ、因果は巡るというか…ねえ:D 著者: マリア様がみてる